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2022.01.27

COLUMN

斜線が駄目なら、天空率があるじゃないか!

斜線が駄目なら、天空率があるじゃないか!

こんにちわー

BIMを主力に、オフィスや障がい者施設、介護施設、保育園、店舗など様々な用途の施設設計を、

鹿児島、福岡、東京など全国のエリアで活動している設計事務所、ixreaです!

 

今日は、建築の専門用語ネタです。

設計の専門家らしく、分かりやすくお伝えしますー

(設計あるある早く言いたい)

 

建物を建てるにあたっては、建築基準法とそれに関連する法規

(都市計画法や消防法、各自治体の条例など)

に基づいて、適法な計画を立てる必要があります。

 

関連法規はとても多く、建物の安全性や耐久性、日照権の問題や、騒音対策、都市計画、災害対応、

地域の良好な環境を守るためなど、複雑に細かい規制が設けられています。

 

これらを全て網羅し、使い勝手やコストなども考えながら、

建物を設計していくのが建築士の役割です。

 

まぁ大変です!

建築士の試験でもこれらの法規の問題がありますが、

法令集を見て解いているのに、100点取れないという難しさ。。

複雑すぎるんですね〜

 

建築基準法の集団規定の一つに、建物の高さ制限があります。

 

建物の高さ、形状を決める法規制がある

建築基準法の集団規定の一つに、建物の高さ制限があります。

絶対高さの制限(これ以上高い建物は建てられないという規制)

日影規制(敷地外に落ちる日影の状況に応じて建物の高さや形状を制限する規制)

斜線規制(道路や隣地に対しての建物の高さを制限する規制)

などなど、これらが都市計画法で規定される用途地域に応じて、規制値が定められています。

 

その中で、今日は「斜線」について取り上げますー

集団規定とは、道路、建築物の高さ、建蔽率、容積率、建築物の用途などに関する規定のことです。

周辺環境や都市計画に関わる部分ですね。

斜線規制とは、

道路や隣地との境界からの距離に応じて、建物の高さを制限する規制です。

用途地域毎に規制値が異なりますが、

道路境界であれば反対側の道路境界から1.25勾配で斜線を引いた時に、建物が斜線を越えないように、

隣地境界であれば、20m立ち上げた上で、1.25勾配で斜線を引いた時に、建物が斜線を越えないように、

北側であれば、5m立ち上げた上で、1.25勾配で斜線を引いた時に、建物が斜線を越えないように、

などなどの制限になります。

 

3Dで確認してみると、例えばこの場合、

斜線より建物が低いので、規制クリアです!

 

ところが、こちらの場合、、

斜線より建物が高い部分があります。

これだとNG!ということです。

 

当然、これらの斜線規制をするのは理由があります。

例えば道路斜線は、道路側の日照や採光、通風を確保し、周辺への圧迫感を低減するように、

北側斜線は、良好な住環境確保のため、南側からの日照や採光を担保できるように、

などです。

 

とはいえ、古い建物で、道路側が斜めにカットされてるようなものを見たことありませんか?

あれは斜線規制を交わす為の形状なんです。

デザイン上とか、居住性を考えて作られた形状ではないんですね。

 

単純に斜線制限で規制するだけでは、上記のような問題が発生したり、

通風や採光を考えると、

道路境界面に全面的に建てられた低い建物と、

道路境界面の30%程度の間口が細くて高い建物では、

後者の方が有利になるんじゃ??ということも出てきました。

斜線制限を緩和する天空率という必殺技!

これらの問題を受けて、平成14年の建築基準法改正において天空率という考え方が盛り込まれました!

 

ある地点から見たときに全て天空であれば天空率100%、

逆に建物で全て塞がれて天空が見えなければ天空率0%という考え方です。

 

斜線制限の範囲内最大で建物(適合建物)を建てた場合の天空率と、

設計している実際の建物(計画建物)を建てた場合の天空率とで比較し、

適合建物の天空率≦計画建物の天空率となっていれば、

斜線制限を緩和できます(^^)/

 

 

例えばこの場合、

斜線より高い部分はほんの少しで、

それ以外の部分は斜線より低いため、

天空率を計算すると、「適合建物の天空率≦計画建物の天空率」となる可能性があります。

 

天空率の計算はかなり難しく、紙と鉛筆ではほぼ不可能です。

ただ、現在はCADやBIMで設計するのが主流、天空率計算もソフト上で計算することが可能です。

これによって、気軽に天空率による斜線制限の緩和を使いやすくなりましたー

ARCHICADで天空率計算を行うには

ARCHICADは日本製のソフトウェアではないので、

日本独自の規制である天空率の計算などは、基本的にサポートしていません。

 

その代わり、生活産業研究所株式会社というところが、

ARCHICADのアドオンソフトとして、天空率計算もできる「ADS-BT for ARCHICAD」をリリースしています。

 

こちらを使うと、ARCHICAD上で天空率計算が可能です!

ixreaでもこのソフトは大活躍しています。

 

建物の規模にかかわらず天空率は有効!

2階建ての住宅でも、

取り付きの道路の状況や建物の位置によっては、

斜線制限の影響を受けるケースが多々あります。

 

天空率はとっつきにくいので、斜線制限にかからないように設計を進めがちですが、

デザインや居住性、快適性に関わってくる場合もあるので、

「斜線制限にかかるので、これはできません」となった場合は、

是非天空率の活用を考えてみてくださいー!

 



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