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2025.11.28

COLUMN BIM

共通データ環境(CDE)とは?BIM運用でも欠かせない情報共有の仕組みを解説

共通データ環境(CDE)とは?BIM運用でも欠かせない情報共有の仕組みを解説

図面やモデル、資料が社内外でバラバラに管理され、どれが最新版なのかわからない、そんな課題を感じたことはありませんか?

現在の建設業界では、こうした情報の分断を解消する仕組みとして「共通データ環境(CDE)」が注目を集めています。

CDE(Common Data Environment)は、プロジェクトに関わるすべてのデータを一元的に管理・共有できる環境のことで、BIMソフト専用の仕組みではなく、情報を正しく整理し、チーム全体で共有するための基盤となっています。図面管理や承認フローの属人化を防ぎ、設計・施工・発注など関係者が同じ情報を扱えるようにすることが、BIMをはじめとする建設DXの第一歩です。

この記事では、共通データ環境(CDE)の基本的な考え方から、 BIM運用で求められる理由、導入効果、整備のポイントまでをわかりやすく解説していきます。

共通データ環境(CDE)とは?

共通データ環境とは、建設プロジェクトに関するあらゆる情報を一元的に管理・共有するための仕組みです。図面・モデル・写真・仕様書・工程表などをクラウド上に集約し、関係者が常に最新の情報にアクセスできるようにすることで、ミスや重複作業を防ぎ、プロジェクト全体の生産性を高めます。

BIMの運用環境として注目されていますが、CDEはBIM専用のツールではありません。二次元CADやExcel、PDFといった従来のデータ形式にも対応でき、「情報を1つの場所に整理し、共通ルールで運用する」という考え方こそがCDEの本質です。

情報を一元管理するための「共通の場所」

CDEは、建設プロジェクトにおける情報の倉庫かつ交通整理役のような存在です。従来は、設計者・施工者・発注者などそれぞれが独自にファイルを管理しており、更新のたびにメールでやり取りする、USBで受け渡すといった手間が発生していました。

CDEを導入すれば、図面・モデル・文章・写真といった多彩な情報をクラウド上で一元的に管理し、共有・承認・レビューまで同じ環境で完結できます。誰がいつどのファイルを更新したのか、どのデータが承認済みかを追跡できるため、「最新版がわからない」「古いデータで作業してしまった」といったトラブルを防げます。

さらに、CDEはBIMだけでなく、二次元CADやWord、PDFなどの一般的なファイル形式にも対応しており、BIM未導入の企業でも、CDEの考え方を取り入れることで情報マネジメントの質を高めることができます。

国際標準(ISO 19650)でも定義される重要な仕組み

CDEは、国際基準規格であるISO 19650シリーズにおいても、BIM運用の中心的要素として明確に定義されています。ISO19650では、CDEをプロジェクト情報を格納し、共有、レビュー、承認するための共有データ環境と位置づけています。

このプロセスでは、

・格納(work in Progress):作業中データの管理
・共有(Shared):関係者間での確認用データ共有
・レビュー・承認(Published):公式承認済みデータとしての公開
・アーカイブ(Archived):履歴データの保存

といった段階で明確に定義されています。

これにより、プロジェクトに関わるすべての関係者が、同じ情報を同じルールで扱うことが可能になります。つまり、CDEはBIMの運用基盤であると同時に、情報マネジメント全体を支える共通環境なのです。

なぜ共通データ環境が必要なのか

BIMやデジタル設計の普及が進む中でも、課題は今も多くの現場で起きています。その背景にあるのが、部門やツールごとにデータが分散してしまう情報の分断です。

こうした状況で、なぜ今CDEの整備が求められているのか、そしてBIM運用の成果を左右する「情報基盤」としての重要性を解説します。

建設業界で起きている情報の分断

建設プロジェクトでは、設計・施工者・管理などの多くの関係者が関わります。その一方で、図面やモデル、見積書、写真などのデータはメール・USB・個人フォルダ・外部ストレージなどに分散して管理されているのが現状です。

このような環境では、「どれが最新版の図面かわからない」「修正版が共有されていなかった」「別チームが古いデータをもとに作業を進めてしまった」といったトラブルが頻発します。

一度発生したミスを修正するための再確認や再施工が必要になり、結果的に工期の遅れ・コスト増加・品質のばらつきを招くことも少なくありません。さらに、データが個人単位で保管されると、担当者の移動や退職によって必要な情報が見つからなくなる属人化も発生します。

こうした「情報の分断」は、BIMを導入していても例外ではありません。BIMモデルや関連資料は複数のツール・サーバーに分かれてしまえば、せっかくの3Dデータも活かしきれずBIM本来の効果を発揮できなくなるのです。

共通データ環境(CDE)は、こうした課題を根本から解決するために生まれました。すべての情報を1つの環境にまとめ、「いつ・誰が・どのデータを使って作業しているか」を明確にすることで、チーム全体の連携と品質を支えます。

BIM導入よりも先に整えるべき“情報の基盤”

近年、多くの企業がBIMソフトを導入し始めていますが、「使いこなせない」「効果を実感できない」と感じるケースも少なくありません。その最大の原因は、情報を整理・共有するための共通データ環境が整っていないことにあります。

CDEを整えることで、図面・モデル・仕様書・コメントなど、あらゆる情報を同じルールの下で扱えるようになります。これにより、BIMデータの更新履歴や承認状況が明確になり、「誰が、いつ、何を変更したのか」をプロジェクト全体で把握できます。

さらに重要なのは、CDEの整備はBIMを使っていなくても効果があるという点です。

たとえば、二次元CADやPDFで作業している場合でも、社内共有フォルダの整理・命名規則の統一・承認フローの明確化など、CDEの考え方を取り入れるだけで情報マネジメントの質は大きく向上します。

このように、CDEはBIM導入のためだけでなく、日々の業務効率化やチーム間連携の基盤を整えるためにも不可欠な環境です。まずは「情報を整理する仕組み」から整えることが、BIM活用を成功に導く第一歩となります。

共通データ環境(CDE)がもたらす3つの効果

共通データ環境(CDE)を導入すると、情報共有の仕組みそのものが変わります。これまで担当者や部署ごとに分断されていた情報がひとつの環境で整理され、プロジェクト全体のスピードと精度が向上します。ここでは、CDEがもたらす代表的な3つの効果を紹介します。

① 最新情報を常に共有できる

CDEを活用すれば、図面・モデル・資料などの最新データを常に全員が確認できます。データはクラウド上で自動的に更新・保存され、「誰が・いつ・どのファイルを修正したか」が履歴として残るため、古いデータ情報を元に作業するリスクを防げます。

また、承認済みのデータのみを公開する運用ルールを設定すれば、誤ったファイルの使用や重複修正を防止できます。これにより、整合チェックや手戻りの工数を大幅に削減することが可能です。

② チーム全体の連携がスムーズになる

CDEでは、設計・構造・設備・施工などの担当者が同じデータにアクセスし、リアルタイムで更新やコメントのやり取りが可能になります。

BIMモデルのマークアップ機能やコメント履歴を活用することで、図面上で直接意見交換を行えるため、意思疎通のスピードが向上します。会議やメールの重複にかかっていた時間を減らし、設計意図の共有や共同作業がスムーズに進むようになります。

さらに、発注者や協力会社など社外の関係者にもアクセス権を発行できるため、安全情報を共有しながら、プロジェクト全体で同じルールのもとに運用できます。

③ 情報の透明性・責任範囲が明確になる

CDEを導入することで、情報の履歴・承認・権限管理が一目で把握できるようになります。誰がいつどのデータを変更し、承認したのかが記録されるため、曖昧になりがちな責任範囲を明確化できます。

また、データのトレーサビリティ(追跡性)が確保されることで、監査・契約対応・品質保証の面でも高い信頼性を確保できます。プロジェクト全体の情報が透明化されることで、意思決定がスピーディーかつ確実に行えるようになります。

共通データ環境を整備する際のポイント

共通データ環境(CDE)は、単にクラウドツールを導入するだけで機能するものではありません。本当に効果を発揮するためには、社内の運用ルール・体制・教育の整備が欠かせません。ここでは、CDEを整備・運用する上で押さえておきたい2つのポイントを紹介します。

ツール導入だけでは不十分

CDEを導入しても、運用ルールが曖昧なままでは、「どのデータをどこに置くのか」「承認済みかどうか」「誰が更新するのか」などが不明確になり、結果的に従来のファイル共有と変わらない運用に陥ってしまいます。

CDEは“ソフトウェア”ではなく、「情報をどのように扱うか」という運用の仕組みです。
そのためには、以下のようなルール設計が重要になります。

・命名規則の統一(ファイル名・フォルダ構造・更新履歴の明確化)
・権限設定(誰が閲覧・編集・承認できるのかを明確に)
・承認フローの整備(承認済みデータだけが共有・公開される仕組み)

こうしたルールを明文化し、誰もが迷わず使える仕組みを作ることで、CDEが“形だけの導入”で終わることを防げます。

教育と社内意識の統一がカギ

CDEは、担当者全員が同じルールで運用してはじめて機能します。ツールを使うスキル以上に重要なのは、「なぜ共通環境が必要なのか」を全員が理解し、日常業務の中で意識的に情報を整理・共有できる体制をつくることです。

そのために有効なのが、社内研修やガイドラインの整備です。

・新しいメンバーがすぐに理解できるCDE運用マニュアルの作成
・定期的なミーティングでの運用ルールの見直し・改善
・CDEを“管理のための仕組み”ではなく、“チーム全体の共有基盤”と捉える文化の醸成

CDEはシステムではなく、「運用文化」です。使う人が変わっても同じ品質で情報が扱われる環境を整えることが、長期的にBIM運用を成功させるカギとなります。

まずは小さく始めるCDE整備

共通データ環境(CDE)は、本来であれば発注者・設計者・施工者・管理者など、プロジェクトに関わるすべての関係者が共通で利用することが理想です。しかし、最初から全員を巻き込み、完璧な仕組みを構築するのは現実的ではありません。

大切なのは、「できる範囲から少しずつ整える」ことです。まずは自社内で、図面や資料の共有方法・ファイルの保存ルール・命名規則など、日常業務に直結する部分から見直してみましょう。

たとえば、

・部署ごとに異なるフォルダ構成を整理する
・図面や仕様書の保存先を一元化する
・最新版の管理方法をルール化する

といった小さな改善からでも、情報の整理・共有がスムーズになります。

こうした積み重ねがやがて、CDEの基本的な運用ルールにつながります。
そして、CDEを通じて情報の流れを統一することで、BIMやDX推進のための土台が自然と出来上がっていくのです。

CDEは一朝一夕で完成する仕組みではありません。だからこそ、まず社内の情報環境をみなおすところからが重要です。その一歩が、BIM運用の効率化と建設プロジェクトの生産性向上への第一歩になります。

ixreaが支援できること

ixreaでは、共通データ環境(CDE)の構築からBIM導入、運用設計までを一貫してサポートしています。
単にツールを導入するだけではなく、「どのように情報を整理し、どんなルールで共有・承認していくか」という情報マネジメント体制そのものの設計支援を重視しています。

CDEの整備は、企業ごとに抱える課題や業務フローによって最適な形が異なります。

ixreaでは、現場の実態を丁寧にヒアリングし、

・既存のファイル運用や図面管理の課題を可視化
・業務プロセスに沿ったルールや承認フローを設計
・BIM運用やクラウド共有環境との連携までを一体的に構築

といった形で、現場に寄り添った実践的なサポートを行っています。

自社の情報共有環境を整えたい、BIM運用を効率化したいと考えている方は、小さな疑問や課題の洗い出しからでも構いません。
CDE整備の第一歩を、ixreaと一緒に進めてみませんか?

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